学校の言語通級指導教室いわゆる「ことばの教室」の授業に、当法人の言語聴覚士がオンラインで同席し、協働する取り組みが始まりました。
新潟県長岡市立新町小学校で「ことばの教室」を担当されている高松敏之先生の研究「ことばの教室の教育DX:対面での「構音指導」を充実させるオンライン支援のあり方/ICTの活用で実現する家庭・教室・外部専門家が協働できる環境作り」(公益財団法人パナソニック教育財団助成による)の一環として、新潟県中越言語・難聴教育研究協議会(以下:中越言難)会長 熊倉校長先生(三条市立裏館小学校)のご指導のもと、当法人の言語聴覚士が「ことばの教室」の授業にオンラインで同席して協働する取り組みに参加しています。
ことばの教室とは
「ことばの教室」は「言語障害通級指導教室」のことで、小中学校の通常学級に在籍している子どもたちが、個々の実態や状況に応じた特別な指導を特別な場で行う教育形態です。"発音がはっきりしない、不明瞭"な状態である構音障害や、"ことばがスムーズに出ない、つっかえる" 等の症状がある吃音など、ことばに関して困り感のある児童が通うことができるものです。文部科学省によると、ことばの教室を利用する児童・生徒の数は約47,100人(令和3年)と言われています。
「ことばの教室」(言語障害通級指導教室)をご担当される先生方の背景は様々で、担当するまでに受けることのできる研修なども地域によって異なっているそうです。
教育者としての技量を生かしつつ、構音障害を抱えるお子さんへ専門性の高い授業を届けるために、それぞれ先生方がたくさんの工夫をされている現状があります。
新潟県中越地域でのことばの教室教育DXの取り組み
新潟県中越地域では、少しでも先生方が授業に取り組みやすいよう、また、授業を受けるお子さんたちにとって有意義な授業となるよう、中越言難という団体が「ことばの教室」や「きこえの教室」(難聴通級指導教室)の先生に向けた研修制度を設けています。
今回の研究では、「ことばの教室」の先生と言語聴覚士が協働することで、教員の教育的視点と言語聴覚士の構音障害に関する専門性を併せて、お子さんの教育・支援に活かせるような仕組み作りを行っていきます。
この体制を整えることで、教員が初めて「ことばの教室」を担当することになった時や、異常構音の評価など医療機関との連携の要否の判断が問われるような場面などにも、安心して授業に臨めるのではないかと考えています。
高松敏之先生は「ことばの教室」の先生として、中越言難の先生方と共に様々な先進技術を活用した教育実践にも取り組まれています。今回の実証実験でも、デジタルビデオカメラを活用し、モニター上に口腔内や全身像を映し出すことで、遠隔地にいる言語聴覚士もその映像を見ながら、評価やプログラム立案、指導について一緒に検討していくことができる仕組みを整えてくださいました。
今後の展望
子どもの発音を専門とする言語聴覚士の数は限られており、近隣に言語聴覚士が不在の地域もあります。地域の学校と言語聴覚士がオンラインで協働できる仕組みが整えば、より多くの学校において教員と言語聴覚士との協力が可能になり、新任のことばの教室の先生の負担軽減と、その先にいる多くの子どもたちへの教育・支援の充実が可能になるのではないかと考えています。
高松先生に、この研究にかける思いをお伺いしたところ、以下のようなコメントをいただきました。
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ことばの教室担当として、昨今気になっていることに以下の2点があります。
・様々な理由により構音指導を受ける頻度が月1回程度になっている児童・保護者がいらっしゃること。
・構音指導の分野は、一般的な教科指導に比べて教育の場での担当者に対する研修が圧倒的に少ないこと。
これらの課題を、GIGAスクール構想により劇的な進化を遂げた学校のICT環境を生かして解決できないかと考え、この研究に取り組むことにしました。「ことばサポートネット」とは二つ目の課題解決に向けて協働することになります。今回の取組が、児童・保護者だけなく教室担当者にも有効な支援の一例になるよう努力していきたいです。」
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コロナ禍を経て、”これまで通り”の授業が制限される中、子どものためにできることを熱心に考えて授業を行われている高松先生はじめ中越地区の先生方と一緒に取組が行えることに、心より感謝しております。
新潟県のお子さんたちの健やかな育ちに寄与できるよう、職員一同取り組んでまいります。
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